KICS DOCUMENT. “BASIC SHIRT”
<プロローグ>
「生地、パターン、縫製、加工、全てにおいて日本の最高峰の技術を集結した
Made in JAPANのメンズウェア」
をコンセプトに掲げ、2012年からスタートしたキクスドキュメント。
“人間工学を取り入れた立体パターンと、素材から縫製・加工まで
All Made in Japanにこだわったもの作り”
で生み出されるアイテムが反響を呼び、
“2016年、期待の若手ブランド”に選出されるなど、国内外で注目を集めている。
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前回の投稿を思いっきり短縮して、前置き代わりに掲載してみました。
お約束してました第2弾、本日投稿です。
↑導入部最後のリンク先は、まぁそういうことのようですので追加しときました。
このブログを見た後にでも飛んでみてください。
さてここからは、いつもの5minutesのノリということで、微に入り細をうがちながら
ディテール面のほうに迫っていきます。
初めて取り扱うに際し、まずはここからだろうということでご用意した、
ブランドのアイコンになる「BASIC SHIRT・ベーシックシャツ」。
気付いたところの総まとめ。
以下お付き合いください。
KICS DOCUMENT.は、「人間工学を取り入れたパターン」というのが
特徴になりますが、それが表れているのが↑かと。
白だと分かりづらいのでストライプを持ってきましたが、縫い線がズレているのが
ご覧頂けるはずです。文中に登場するセットイン=袖の後付けの証拠。
テーラードジャケットの袖と同じ、「いせ込み」しながら縫い合わせることで、
稼動域が広がって動きやすくなるための縫製です。
この袖付けに関しては、以前FUJITOさんのシャツのほうでも
取り上げていましたが、こういうことを理解して請け負える工場も少ないだけに、
一見の価値ありなところだと思います。
お持ちのシャツと比べて、背中側のヨークがなにか違うのに気付いたでしょうか?
そう、縫い線が直線じゃなくなだらかに曲線になっている。
これをキクスさんのほうでは、「カーブカッティング」と呼んでいます。
通常でしたら真ん中や脇に、ダーツやらプリーツ(タック)付きがデフォルトなはず。
丸みをだすことで、肩甲骨の動きに追従しやすくしたそうです。
これはユニーク。その発想があったのかと。非常に感心しました。
動きやすさを考慮したパターンメイキングが、
結果デザインの面白さにもつながっている好例。
こちらもチェックの程をお忘れなく。
パッと見、前立てとラウンドさせた裾のコンビネーションには、
目を惹かれるんじゃないかと思います。キクスならではのオリジナルディテール。
持ち出し(↑の矢印みたいな前立て)は縫い付けてあるので、
フェイクというかギミックに近い感覚ですが、大昔のワークシャツから
着想を得た(はずの)ディテール。
諸説ありますが、本来はボトムスと連動させる(サスペンダーボタンみたいな具合に)
デザインの名残的なところでしょう。
やや不確かな情報に加えて、これには参ったと思うのが、↑のロゴ入りボタン。
1個1個にレーザーで彫るそうですが、その後に“墨”を加えて拭き取る(!)ことで
ようやく完成する、超絶手作りなオリジナルボタンになります。
職人さんのさじ加減で、微妙に色の乗り具合が変わる、
ひとつとして同じものが存在しないはかなさと言ったら…
量産される既製品なのに一点モノ感を楽しめるのは、希少な体験になることでしょう。
感動巨編、その2。
先ほどの続きになりますが、前身の最終ボタンのみ、ボタンホールが“横切り”です。
イタリアもんとかで時々見かける仕様。
建前的には前身のボタンの中でも、最も負荷の掛かる場所だけに、
横切りにすることで負荷を分散させるということになりますが、
これも諸説があって、ひとつだけ横にすることで掛け漏れ(掛け忘れ)を防ぐ、
そんないきさつもあったということを思い出しました。
私が感動したのはそこではなく、↑でご覧頂ける“白い当て布”。
コレ良く見て頂くと、ボタンホールを玉縁(パイピング)処理!するためのものでして、
デザイン・耐久性も加味した興味深いデザインです。
時々アウターの類いで見かけた記憶がありますが、
シャツではそうそう見かけない、ユニークな発想。実に興味深いです。
白いほうでも同様の仕様になっています。
秀逸ポイント、その3。
パターンメイキングの妙って、こういうところにも表れるのねという好例。
↑でご覧頂けるカフスですが、黒い矢印で示したように、
末端に向かって絞っている=テーパードさせたような見え方です。
で青い矢印はなだらかに曲線がかっているのがご覧頂けるかと。
一般的にはカフスなど、まっすぐ・直線なパーツをくっ付けますが、
そうすると手首を通り越して手の平のほうに下がり(落ち)やすくなり、
煩わしく不快な気分にさせてくれます。
こちらはその辺りを緩和させるように、パターンを工夫して
裾=端の口径を狭くすることで手首に引っ掛かりやすくなり、
フィット感が良くなりわずらわしさも解消、
といった仕様です。
?な方は、お近くのシャツと見比べてみてください。一目瞭然なので。
最終項、感動のフィナーレ。
久し振りに見たよ、“グリカン”しているシャツ…
これも以前、FUJITOさんのシャツのほうで触れていましたが、
剣ボロの端っこがカンヌキ止めで縫ってある、あのディテール。
正式には手でかがる止め方を指すものなので、コイツは該当しませんが、
知らないでする補強の縫い止めではないだけに、
工場の精度の高さ・手の良さを体感出来るところです。
もともとドレスシャツ作りからスタートした、
東北の名縫製工場で作られているだけに、細かい点まで行き届いているのは
素晴らしいのひと言。
これなら某有名ブランドさんもお願いするだろうと納得する、
非常に見応えのあるカジュアルシャツだと言えます。
KICS DOCUMENT.のウリのポイント、そして私が気付いた感動ポイントの
羅列でお送りしてきました本日のブログ。いかがでしたでしょうか?
実際のところ、長くやっていると私自身の気分も少しづつ変わり、
ノリとか雰囲気に流されることもチラホラ。
こうるさいウンチクよりかは、見た目とかフィーリングとかっしょ?
って軽いな。。
ただ、いいねとかグッと来るポイントというのは、パッと見では分からないのが
メンズの洋服だったりしますので、その辺りをご紹介する・出来るのが
5minutes的な良さだとは思っています。
そういう意味でもこちらのブランド、非常に手応えを感じています。
もうこんなに書いたので(・・)、ブランド紹介終了となりそうですが、
見逃しているところもありそうですし、まだ生地にも触れていない…
どうやら先は長そうです。
新しいブランドを取り扱うということは、得てして冗長になってしまうもの。
ブランドとアイテムを知って頂くきっかけになれば幸いです。
宜しくお願いします。